IndependentWHO – 原子力と健康への影響

「世界保健機構(WHO)は、放射能汚染の犠牲者を守るという使命を果た していません。」

15 - March - 2013

IndependentWHOの主催で、2013年3月13日から28日まで、ジュネーブのサンジェルベ劇場でイタリア人写真家ピエルパオロ・ミッティカ氏の写真展が開催されました。ミッティカ氏は、1986年のチェルノブイリ原発事故と、2011年3月11日の福島原発事故の被害を受けた人々の様子を撮影してきた写真家です。

ピエルパオロ・ミッティカ氏は、国際的にも名声の高い人道主義者の写真家です。

 

今回の写真展に展示された写真には、ミッティカ氏のルポタージュから抜粋されたテキストが付与されました。写真展は福島での大惨事から2周年にあたる3月11日に予定されている抗議活動の一環として開催されたものです。

ピエルパオロ・ミッティカ氏の作品は、下記サイトで閲覧可能です。

www.pierpaolomittica.com

 ~

写真展の開幕にあたり、 IndependentWHOのメンバーであるアリソン・カッツが「原子力の永続生と真実」と題したスピーチを行いました。以下にスピーチの原文を紹介いたします。

「原子力の永続性と真実」

原子力と原子力がもたらす大惨事においては、永続性と真実という、2つのテーマが繰り返し語られます。

ジュネーブのサンジェルベ劇場(1)で開催される、写真家ピエールパオロ・ミッティカ氏の写真展に際し、同氏の著作(2)を再読し、その中から次の文をここに引用します。

「事故から2週間足らずで、チェルノブイリは世界全体の問題となった。最も被害が深刻だったベラルーシでは、30%の領土が不毛な土地となり、再生には何千年もの歳月がかかる。最も汚染された地域の面積は260000平方キロメートル(イタリアの面積とほぼ同じ)で、放射能が通常のレベルに落ち着くまでに10万年かかるのだ」

チェルノブイリ事故からほぼ27年になるので、あと9万9973年残っていることになります。これが原子力の永続性です。ピエールパオロ・ミッティカ氏の言葉を更に引用します。

「あらゆる手を尽くしてチェルノブイリの真相を隠蔽しようとしたところで、何千年にも渡って隠し通すことは誰にも出来ないだろう。」

しかし、永続性は真実の普及を促進させるのです。

旧ソ連の国民は、自国で起こった出来事を世界に知らせることができませんでした。ソ連政府、世界の原子力推進国とそのロビイストによる情報隠蔽工作はほぼ完璧だったのです。

大半のヨーロッパ人は、ヨーロッパが旧ソ連のリクビダートルの手によって救われたことを知りません。実際、消火には10日間にわたる英雄的な努力が費やされました。彼らはヨーロッパが居住不可能になってしまうほどの大火災を間一髪で食い止めたのです。ヨーロッパの住民は、自分達が今日生きて生活を続けることができるのが、こうした男たち、女たちのおかげであることを知らずにいます。彼らのうち何万人もが被曝のために若くして命を落としていったのです。

ミッティカ氏の著書には次のように述べられています。

「チェルノブイリは過去ではない。チェルノブイリは歴史ではない。チェルノブイリは始まりなのだ」

事実、健康への影響、特に遺伝子へのダメージは、年を経るにつれて悪化します。私達は実際、問題のスタート地点にいるにすぎないのです。悪魔的とも呼ぶべき皮肉、それはWHOが人類は放射能との共存に慣れるべきだと主張したことです。残念なことですが、これは間違っていないのです。

25年後、福島で原発事故が起き、まもなく事故から2周年を迎えようとしています。この悲劇の中、 この事故が原子力の終焉の始まりであると願わずにはいられません。なぜかというと、日本の人々は起きたことについて既に語っていて、語ることをやめないからです。そして私達は、彼らを支援するために最善を尽くし、何が起きているのか世界中に知らしめなければなりません。

健康被害の実態は、遅かれ早かれ暴かれます。IAEAや情報隠蔽の鍵を握るWHOがどんなに努力したとしてもです。 WHOは、軍事、産業目的を問わず 、原子力活動は健康に害を及ぼさないと太鼓判を押しているのです。

WHOは、福島原発事故における健康リスク評価の報告書を発表したばかりです。同時に、独立系の市民と科学者は、放射線防護のためのフォーラムの会議録を今ここに発表しました。

WHOによるこの新しい報告書は、公衆衛生に関する任務や能力に欠けるIAEAによって実質的に書かれたものであり、パロディーと呼ぶほかありません。このため、「放射線量はとても低かったため、健康被害は最小にとどまる」と報告書で述べられていてもなんの驚きもありません。おなじみの常套句です。この報告書はウソの申し立て、不作為と欺瞞に満ちているのです。

しかし、世の中は25年前と比べると批判的になってきています。 健康に関する権威であるこの国際機関が主張する、スキャンダルと呼ぶべき健康被害の過小評価は、すでに非難されています。そして、独立系の市民と科学者である私達は、放射能がもたらす健康へのダメージのスキャンダラスな過小評価の糾弾をこれからも続けていきます。

2012年5月に IndependentWHOが主催した、科学者と市民のためのフォーラムの議事録(3)が発表されたところですが、その中でポール・ルローは次の言葉を寄せています。「WHOの犯罪は、一日たりとも忘れてはならない」。私達は今後も日本の皆さんと一緒に、子供達と彼らの未来を守るために一緒に戦い支援を続けていく所存です。

2013年3月8日 アリソン・カッツ

 

(1)2013年3月13日〜28日まで、サンジェルベ劇場入り口で開催

(2)ピエルパオロ・ミッティカ「チェルノブイリの隠された伝説」2007年

(3)放射線防護のための科学者と市民のためのフォーラムの会議録:チェルノブイリから福島へ  IndependentWHOにより2013年刊行

ページトップへ