IndependentWHO – 原子力と健康への影響

「世界保健機構(WHO)は、放射能汚染の犠牲者を守るという使命を果た していません。」

2 - November - 2012

Mr Katsutaka Idogawa in front of WHO

反原発の街。福島第一原発からわずか3キロに位置する双葉町の町長にとっては夢のような街に違いない。彼のふるさとは福島の原子力発電所が爆発して以来、放射能のために地図から掻き消され、町民は何十年にも渡って町を追われることになった。国連で証言を行うためにジュネーヴを訪れた井戸川克隆町長をジュネーヴ市長レミ・パガニ氏が迎え、ジュネーヴ市民達の心からの共鳴と応援を井戸川氏に伝えた。

コントラトムとIndependenWHOからも数多くのメンバーが駆けつけた。レミ・パガニ市長による質問「汚染地域に住み続けたり、戻されたりさえする住民の健康被害問題を無視する日本政府の政策に対して、井戸川さんに連携してくれる市町村長は他にもいますか?」に対しては「いいえ、私一人だけです!」と言う答え。「いったいどうして?」「他の市町村長は、危険を最小化する行政のウソを信じているからです。本当の放射能汚染数値は公開されません。その上日本政府は年間の被曝許容量を国際組織が推奨する最大基準の20倍にまで引き上げてしまいました:日本の年間被曝許容量は今では20mSvです。世界の他の国ではどこも1mSvなのに。私達はモルモットなのです。

双葉町町長は、チェルノブイリ原発事故後にソ連政府がずっと汚染度合いの低い地域も避難させていたことを指摘した。そうした対策にも関わらず、避難の行われなかった地域での子供達は、現地の小児科達の見積もりによると80%が今現在病気であることを私達は知っている。双葉町町長は子供達が汚染されていない地域に避難させてもらえるよう支援を求めて渡欧したのである。その確固たる勇気に人々は深い感銘を受けた。

国連人権理事会にて

市庁舎における温かい歓待に続いて国連で行われた情報会議は、一変して厳しい雰囲気に包まれていた。井戸川町長と同行の柳原敏夫弁護士はこの場において、避難の有無に関わらず住民達の置かれた真の状況、特に子供達の健康状態を伝えることになっている。二人は日本政府に提出すべき勧告書を準備してきた。これは目下国連人権理事会によって、日本国内で人権が尊重されているかどうか暫定審査を受けているところである。重々しい手続きであるが、様々な組織が世界中を証人に、人権侵害に対して呼びかけを行うことを可能にする。放射能汚染された空気を吸い、放射能汚染された食品の摂取を続け、治療の施されない子供達。これは子供の人権に対する侵害である。さるぐつわをされたマスコミ、虚偽の情報の流布。これは表現と報道の自由の権利に対する侵害である。

危険にさらされた子供達の避難の権利

柳原敏夫弁護士は、酷い汚染を受けた郡山市から避難を求めて訴えを起こしている“ふくしま集団疎開裁判”の14人の子供達を代弁する。裁判は現在進行中だ。勝訴すれば同じ危険にさらされているすべての子供達が避難権を獲得する道を開くことになる。その数は20万人から30万人と推定される。日本政府がいかにチェルノブイリから学んで、賠償費負担を逃れ、原子力産業に被害を与えないための政策を実行しているか、柳原弁護士は解説する。例えば許容基準量の引き上げ、内部被曝の体系的測定を避け、統計を取らないことによる既に現れ始めている病気の隠蔽、情報のコントロール等・・・。

行政による公式の情報隠蔽

井戸川克隆町長は午前に行った発言を再度述べなおした。行政が新たに設置したモニタリングポストの写真が表示される。これらのモニタリングポストは、国際基準設定だったものに比較して、40%少ない空間線量しか表示しない。“こども達を放射能から守る世界ネットワーク”を代表して参加した日本人の若い学生本田貴文さんが、福島地方に住む思春期の女の子の手による手紙を読み上げた:「私は子供を産むことができますか?」「産まれて来る子供は正常ですか?」

ミシェル・フェルネックス教授が登場し、放射能を浴びたり、体内に取り込んだりした後に起こる先天性異常について話をした。「ゲノムが傷つけられ、異常が現れる。その異常は次世代に伝えられていく。福島の周囲では既に流産、周産期における胎児の死亡、体重の足りない新生児、甲状腺に異常を持つ子供、そして突然死の増加が報告されている。癌が現れるのにはしばらく時間が掛かるだろう。」「子供や妊婦を避難させること、すべての住民に汚染されていない食品を提供することが緊急に求められる。

WHOの前で抗議を続けて5年

井戸川氏と柳原氏はまた、WHO本部前で五年間に渡って日々抗議運動を続けている多組織グループ Independent WHOの“見張番(ヴィジー)”のもとにも挨拶に訪れた。“人々に最善の健康状態を保証する”と言う本来の使命をWHOが果たすことを求める活動家達である。WHOは今では、放射能が人間の健康にもたらす被害を研究する部署すら持たなくなっている。本来の責任を放棄し、原発ロビーの政策を一方的に保証するだけの組織と化しているのだ。その原発ロビーを支えているのは原発大国である。

Left to right: Patrick Dubezak (vigil), George Gordon-Lennox, Megumi
FURUBAYASHI (UN Geneva representative ‘ATD Quart Monde’), Catherine
Bibard (vigil), Dr Michel Fernex, Katsutaka IDOGAWA (Mayor of Futaba, Japan),
Maitre Toshio YANAGIHARA (representative of plaintiffs, Fukushima Collective Evacuation Trial), Takafumi HONDA
(World Network for Saving Children from Radiation), Miho Kozawa-Hoffmann (IndependentWHO),
Hisashi SAITO (interpreter).

健康問題担当の国連特 別報告官、日本訪問決定

10月30日に国連で のサイドイベントを企画した「言論・表現の自由を守る会」、福島県双葉町井戸川町長のジュネーヴ訪問をサポートした「市民と科学者の内部被曝問題研究会(内部被曝問題研)」、および「日本弁護士連合会」を はじめとする日本からの出席者やNGOの努力が早くも実を結び始めた。日本を対象としたUPR(普遍的定期レビュー)で、「福島の住 民を放射能の害から保護し、健康と生命の権利を遵守し、健康の権利の調査担当の国連特別報告官の訪問を保証すること」とする勧告がな されたのだ。その結果、国連特別報告官のAnand Grover氏が11月15日から26日まで来日することとなった。「内部被曝問題研」は同氏に、対象地域の放射能汚 染実態についてひときわ警告する書簡を送ったばかりだ。内部被爆問題研のメンバーは、IndependentWHOの主催で5月にジュネーブで開 催されたフォーラムにも参加している。

井戸川町長、柳側弁護士そして見張番(ヴィジー)達はこの対面に深い感銘を受けた。互いの連帯感を確かめ合い、核の脅威に終止符を打つためにこれだけ多くの組織 が連携していることを象徴する情景であった。

オディル&ジョージ・ゴルドン・レノックス著(Independent WHOメンバー)

2012年11月9日『ソリダリテ』誌217号掲載

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